09米粉の加工自家栽培米を使った米粉の6次産業化の可能性

食の欧米化にともない「お米」離れが進み、いつしか毎日の食生活に欠かせないものが「小麦粉」になっている方も少なくないでしょう。今の日本では、一日米を食べない日はあっても小麦粉を食べない日はないというくらい、小麦粉が食文化の中心のようになっています。

微粉砕米粉の始まり

米粉は以前から和菓子やせんべい用などに用いられており、用途に応じた米粉としての歴史がありました。そのようななか1998年、新潟製粉が気流粉砕という米粉の新しい製粉技術と製粉機を導入し、和菓子用よりももっと粒が細かくでんぷん損傷を最小限に抑える「微粉砕された米粉」が製粉できるようになりました。
そして、微粉砕された米粉にグルテンや小麦粉と合わせてパンを焼くという「米粉パン」の開発が始まりました。粒では食べなくなった米を微粉にすることで、和菓子以外の米粉の利用が進められ、米粉の新しい世界が広がったのです。
当時は、微粉砕された米粉=小麦粉の代用としての位置づけでした。やがて、微粉砕された米粉を製粉する機械メーカーも増えて、和菓子やせんべい用としての米粉に加えて次第にうるち米の微粉砕米粉の利用が増えてきました。同時に、小さな製粉機を購入して、自分たちで栽培した米を米粉にして販売する農家も現れました。
しかし、残念ながらその「米粉」で何をどう作れば何ができるのかを消費者に伝えきれず、徐々にそれら微粉砕米粉は売り場から消えていきました。

2グルテンフリーとしての米粉

微粉砕米粉が誕生して25年ほどになりました。
発売当時は小麦粉の代用品として考えられていたため、小麦粉のような製品ができないと「米粉はだめだ」というレッテルを貼られることも多くありました。小麦粉のための機械や設備を使って米粉製品を作ることは、言葉が通じ合わないにも関わらず、無理やり同じ言葉を使うようなものだと思います。小麦粉には小麦粉の言い分があり、米粉には米粉の言い分があることを、まずは知るべきです。
やがて、小麦アレルギーの問題や健康上の問題で「小麦粉」を食べられない・食べないという方々も多くなってきました。そのため、小麦粉や小麦グルテンを使わないグルテンフリーの米粉製品の研究も進んできました。
たとえば、小麦粉はグルテンネットワーク・米粉はでんぷんネットワークが形成されるということを、2008年に『ノングルテンでふんわりやわらか・白神こだま酵母のお米パン』(農文協刊・大塚せつ子著)で皆様にお伝えしましたが、添加物を一切使わずグルテンフリーの米粉パンを焼くことができるのです。さらには、米粉パンは小麦粉のパンより砂糖の分量が少なくてすみます。なぜなら、米自体に甘みがあるからです。
グルテンがなくてはパンが焼けない、という常識を破るまでには試行錯誤しましたが、理論ができあがってしまえば、製法は難しいものではありません。今では、手成形できるパンも簡単に焼けるようになりました。大塚せつ子式手成形パン用米粉ミックス粉(特許取得第6304673号)も開発し、その米粉に合わせたミックス粉も調製可能です。
作ろうと思えば自家栽培米で、グルテンフリーの商品を作ることが可能な時代になりました。

3米粉の特長

(1)良質な米粉を入手

丹精込めて作った自家栽培米を良質な米粉にするには、その製品にふさわしい粒子と低いでんぷん損傷率が求められます。ところが現実的には、たとえば一回の製粉ロットが500K単位では、なかなか細やかな対応ができません。しかし、30Kから良質な米粉を製粉してもらえる製粉委託業者もあり、こういう製粉会社がもっと増えてほしいと思っています。
良質な米粉の入手が可能になったら、パンもスイーツも自家栽培米でかぎりなく失敗しないで作る方法があります。しかし残念ながら、米粉はまだ小麦粉のように同じレシピで同じ製品ができるというところまで開発が進んでいません。

(2)米粉パンは作り置きが可能

米粉にはそれを補うもっと優れている性質があります。それは、冷凍が可能だということです。ごはんを冷凍して温めなおすと、またおいしく食べられますが、何と米粉になってもその性質が同じなのです。つまり、小麦のパン屋さんは焼きたてが命であり、早朝からパンを焼いているのに比べ、米粉のパンは小麦粉のパンよりも短時間で焼きあがることと、すべてではありませんがそのほとんどが、冷凍保存ができるのです。これはケーキ類なども同じで、冷凍することによってさらに甘みが増して、味が落ち着きおいしくなります。
つまり、早朝から製造しなくても、繁忙期に製造しなくても、閑散期や時間があるときに作り置きができるということなのです。それは、米だけで販売することも、そして米粉にして製品を作って付加価値を付けて販売することも可能だということなのです。

4自家栽培米で6次産業

グルテンフリーの米粉製品は、小麦アレルギーだから食べるのではなく、体に優しくておいしいから家族みんなで食べられることを、ぜひ知ってください。
米の微粉砕技術は近年の新しい技術なので、米を活用した価値の創出は不可能だと思い込んでいるだけだと思っています。

「この田んぼで採れた米がパンになりました。」
「この田んぼで採れた米でシフォンケーキを焼きました。」

そんなキャッチフレーズで、田んぼに未来を見ていただきたいのです。道の駅や直売所で販売するだけではなく、田んぼのそばに小さなCaféを作って、パンやケーキとコーヒー・紅茶など、地域の方々に楽しんでもらえそうな交流の場所も、米を通して提供できると思います。

食は感動!
食欲は生命力!

私たちの食を根本から支えている「米農家」の皆様にこそ、もっと米の可能性を知っていただきたいと、心から願っています。
大量生産大量消費の時代は終わりました。
これからは、求めている人に求められているものを届けていくことが、大切な時代なのかもしれません。
自慢の自家栽培米に付加価値を付けて製品化するのも、決して夢ではありません。

(一社)日本米粉クッキング協会 代表理事 大塚せつ子