08米粉の種類と特性米粉の用途別基準

米粉の用途別基準制定の経緯

米離れが進む中、米の多用途利用による食料自給率向上を目指し、農水省と民間企業が連携して2009年度より米粉普及拡大に取り組んできました。11年には生産量は4万tとなりましたがその後減少し、12年度以降米粉用米の利用量はおおむね2万数千t程度で推移、持越在庫による原料米対応等により、生産量は13年産以降、2万t前後にとどまっていました。
需要量を伸ばすためにはグルテンを含まないなど、米粉ならではの特徴を生かした商品の開発を加速させる必要がありました。しかし、原料米の品種も多様で、製造工場も小規模が多く製粉方法もさまざまであるため、製造工場によって品質にバラツキが生じ、そのために利用が広がりにくいという課題がありました。そこで、米粉の普及に向けて、製造業者の自主的な取組みが推進されるよう「米粉の用途別基準」の策定へ農水省が学識経験者とともに検討してきました。
2017年3月29日、グルテンを含まない「ノングルテン」米粉製品の表示に関するガイドラインおよび菓子・料理用、パン用、麺用などの用途別の加工適性に関する米粉の用途別基準が公表されました。同年5月25日には、米粉の国内普及・輸出拡大に向けて、米粉製造業者や米粉を利用する食品製造業者、外食事業者、原料米の生産者団体、消費者団体等の関係者から構成される日本米粉協会が設立。用途別基準や「ノングルテン米粉」などを盛り込んだ「米粉製品の普及のための表示に関するガイドライン(表示ガイドライン)」実効のための普及啓発活動、新製品の開発促進、6次産業化支援、市場育成、輸出拡大など幅広く取り組むこととなりました。

米粉の成分と加工性

米粉の加工性に影響を与える成分として、粒度、吸水性(でんぷん損傷度)、アミロース含有率、水分含有率、グルテン添加率があげられます。

(1)粒度

米粉の粒度は通常、製粉機の網の目の大きさで表されます。粒径は米粉の加工性や食感に影響を与えます。米粉パンでは、粒径が大きいと比容積が低下します。

(2)吸水性

米粉の吸水性は、粉砕時に生ずるでんぷん損傷度(でんぷん粒に割れや傷があること、その度合い)に由来し、でんぷん損傷度が大きいと粉に対する吸水量も多くなります。
でんぷん損傷度が低いと米粉パンにおいては膨らみが大きくなり、反対にでんぷん損傷度が高いと米粉パンやスポンジケーキでは、しっとり感が増します。

(3)アミロース含有率

米に含まれる全でんぷんに対するアミロースの割合をアミロース含有率といいます。アミロース含有量が多い米を炊くと粘りが少ないご飯になり、少なければ粘りの強いご飯になります。
日本の一般的なうるち米は、アミロース含有率17~23%程度の中アミロース米であり、もち米はアミロース含有率が0%です。アミロース含有率は加工において重要な要因となります。

(4)水分含有率

水分含有率は品質保持や調理加工における加水量に影響するため、水分範囲が定められています。

(5)グルテン添加率

グルテンとは小麦の不溶性たんぱく質で、グルテニンとグリアジンという2種類のたんぱく質からなります。米にはグルテンがないため米粉パンを作ると、膨らみにくくつぶれやすくなります。そこで、グルテンを15~20%加えると小麦粉と同様の作り方でパンを作ることができます。
ただし、グルテンは小麦から抽出されたもので米由来ではないため、グルテンを加えた場合は添加した旨を明記する必要があります。

米粉の用途別基準について

用途別基準は、米粉の普及の観点から、米粉製造業者による共通の用途別の米粉基準に基づく自主的な製品製造の取組みを促すためのものです。事業規模の大小に関わりなく、すべての米粉製造業者を対象としています。
用途別基準では、米粉の主な用途について、菓子・料理用、パン用および麺用に分類します。これら用途ごとの米粉の粒度、でんぷん損傷度、アミロース含有率および水分含有率等の基準は図表1のとおりとし、用途を表記することとします。

図表1 米粉の用途別基準・用途表記

米粉の用途別基準・用途表記
  • 一部、菓子・料理用を含む。
    各用途の具体的な例は図表2を参照。

具体的な用途については図表2のとおり、アミロース含有率によって加工適性が異なります。米粉ケーキを作る場合、アミロース含有率が高い米粉を使うと、さらっとした食感で型崩れしにくく、アミロース含有率が低い米粉はしっとり感が出ます。米粉パンの場合、高アミロース米ではパサパサしたパンになり、低アミロース米はしっとりとしたパンとなりますが腰折れて変形しやすくなります。

図表2 各米粉の具体的な用途の例およびアミロース含有率に応じた用途詳細

各米粉の具体的な用途の例およびアミロース含有率に応じた用途詳細
※1 シフォンケーキなど、※2 とろみ付け等
上新粉など、既存用途向けの米穀粉は対象としない。

〔付帯事項〕

  1. 1番の米粉は、アミロース含有率の別によって適応する用途が異なるので、米粉製造業者は上表を参考としながら、表示等により、消費者等に対して用途の詳細情報を伝達するものとする。
  2. 3番の米粉であってアミロース含有率25%以上のものは強弾力の麺への適性が高いので、米粉製造業者は上表を参考としながら、表示等により、消費者等に対して当該情報の積極的な提供に努めるものとする。
農林水産省「『米粉の用途別基準』及び『米粉製品の普及のための表示に関するガイドライン』の公表について」