06米の加工品米ぬかたんぱく質からの植物肉(代替肉)

1プロテインクライシス

世界的な気候変動、情勢の変化、人口爆発、地球温暖化などの環境問題等、食糧の安定供給が危惧され、フードセキュリティーに対する関心が高まっている。世界の食糧需要が高まるなか、穀物の供給量は、2050年までに現在の1.3~1.6倍になると予想されているが、たんぱく質に関しては、さらにその上の2.4倍増が予想されている※1
この背景には、人口爆発以外に、新興国の食生活の向上があるといわれており、たんぱく質の市場規模・成長率のバランスから、欧米は大きな市場であり、中長期的にはアジア・アフリカが市場をけん引する形になると予想されている※2
現在の主要なたんぱく質の供給源は、畜肉が中心となっているが、カーボン・オフセットやバーチャルウォーター、温室効果ガス発生などの問題をはらんでいることから、“プロテインクライシス(たんぱく質危機)”と称する持続的な畜肉の安定供給に限界があるとされている。これらを背景に加えて、ビーガン、ベジタリアン等、菜食主義の方々へのたんぱく質源としてのニーズも高まっている。

2たんぱく質源としての代替肉

このように、国内外を問わずさまざまな企業が植物性たんぱく質を原料とした代替肉、高たんぱく質食品の開発・販売に各社、注力している。

(1)代替肉の製造

代替肉の製造方法は、ボトムアップ法とトップダウン法に大別される。

1)ボトムアップ法

ボトムアップ法は、まさに、1からたんぱく質を合成させることを主眼としており、微生物たんぱくも本法に含まれる。
ステーキ肉を構成する筋、脂肪、血管組織となる細胞をそれぞれ培養し、3Dプリンターの併用により、ステーキ肉等の作製を行うものである。

2)トップダウン法

トップダウン法は、既存のたんぱく質(ここでは、植物性たんぱく質)に対し、親水コロイド(多糖質等)を混合することにより、連続層と分散層からなる異方性の多孔質構造を得ることができ、前述の食感の演出を可能にしている。

(2)大豆たんぱく質の加工

現在、市販の大豆たんぱく質を原料とした代替肉生産は、2軸型の押出成形機による加工により、繊維状構造と積層構造の同時形成を可能にしている。最近は、新規マスキング剤、マスキングフレーバーの開発により、素材である大豆たんぱく質特有の香りを抑え、よりいっそう畜肉の風味の再現を可能にしている※3

3非可食部バイオマスを用いた代替肉の開発

筆者らは、世界的な食糧難を受け、食料と競合しない非可食部バイオマスである米ぬか、無洗米製造排水(精白かす含有排水)から高濃度のたんぱく質精製画分の回収が可能な新規プロセス技術であるIP-EWT(Isoelectric Precipitation and Electrolyzed Water Treatment process))法を開発した※4。さらに、本法より得られたたんぱく質濃縮物から前述のトップダウン法により、代替肉の開発に成功している。
原料である本たんぱく質濃縮物は、米アレルゲンおよび、米以外の食物アレルゲン(特定7品目:卵、乳、小麦、そば、落花生、甲殻類〈カニ、エビ〉)を含んでいない(検出されない)ことから、今後、安心・安全な“非可食部由来アレルゲン・GMOフリー代替肉”としての供給が期待される※5
日本の食料自給率は38%(カロリーベース)とされており、牛肉の食料自給率に関しては、飼料自給を反映した場合、13%にまで落ち込んでしまう※6。そのようななか、日本国内の米自給率は99%(令和4年)※7であり、米および米由来成分は、日本国内において、輸入に依存することなく安定自給・供給が可能な食料・植物資源として有望である。
しかしながら、米消費量の減少、稲作従事者の高齢化による後継者不足の問題等があり、米および米由来成分の供給が今後、大きな課題となりつつある。
脱脂米ぬかなどの米由来バイオマス資源の循環利用の一端をになう、米由来たんぱく質からのたんぱく質供給・代替肉生産は、米副産物中のたんぱく質資源の有効利活用につながり、いたっては、稲作農業者の収益性向上による持続的な稲作へ貢献につながることが期待される(図表1)。

図表1 代替肉の開発が持続的な稲作に貢献

代替肉の開発が持続的な稲作に貢献
山形大学大学院農学研究科 教授 渡辺昌規

参考文献

  1. TECH+マイナビ「なぜ今、藻なのか?「たんぱく質危機」の解決を目指すタベルモとは」
    https://news.mynavi.jp/techplus/article/20180801-872590/
  2. Protein Ingredients Market Analysis, 2019-2029.Transparency Market Research.Inc.
    https://www.transparencymarketresearch.com/protein-ingredients-market.html
  3. 渡辺昌規「環境調和型プロセスにより脱脂米糠から回収・精製されたアレルゲンフリーたんぱく質及びリン化合物の機能性食品原材料としての用途開発・市場導入に関する研究~国内産水稲からのたんぱく質供給による持続的な稲作の可能性~」化学と生物、Vol.61No.4P.172–178(2023)
  4. M.Watanabe, I.Maeda, M.Koyama, K.Nakamura&K.Sasano:J.Biosci.Bioeng., 119, 206(2015)
  5. M.Watanabe, C.Yamada,I.Maeda,C.Techapun, A.Kuntiya, N.Leksawasdi, P.Seesuriyachan, T.Chaiyaso, S.Takenaka, T.Shionoetal.Lebensm.Wiss.Technol., 99, 262(2019)
  6. 農林水産省「令和4年度食料自給率・食料自給力指標について」
    https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/230807.html
  7. (独)農畜産業振興機構「令和4年度食料需給表・食料自給率について」
    https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_002917.html