06米の加工品アルファ化米―おいしい非常食へと進化
1アルファ化米とは
アルファ化米の「アルファ(α)化」とは、米に含まれるでんぷんの状態を指しています。おいしく炊き上げた米をすぐに急速乾燥させ、水分を取り除くことでアルファ化したでんぷんの状態が維持できます(図表1)。このため、アルファ化米に湯や水を加えるだけで、火を使うことなく炊きたてと同じような柔らかくおいしいご飯を食べることができるのです。
図表1
技術的には「炊いたお米を均一に乾燥させる」「乾燥後、板状になった米の粒を壊さずに砕く」ことで米のおいしさを損なわないように、各メーカーはさまざまな工夫をして製造しています。
2非常食としての利用
第二次世界大戦中は軍用食として利用されたアルファ化米ですが、戦後は登山などアウトドアで多く利用されていました。
大きな転機となったのが、1995年の阪神・淡路大震災です。災害時にも柔らかいご飯を食べたいという声が強まり、乾パン中心だった自治体の災害に備えた非常食としてアルファ化米の採用が増加したのでした。同時期にパッケージ改良が進み、保存期間が大幅に伸びたことも、長期間の保存に適しているとして注目されるようになった大きな要因となりました。
3アルファ化米の進化
阪神・淡路大震災以降、中越地震・東日本大震災等日本は多くの災害に見舞われ、避難所生活を数多く経験するなかで、アルファ化米だけでなく非常食全般に対する要望も多岐にわたるようになりました。
さまざまな要望に応え、「アレルギー・ハラールやえんげ困難者対応といった災害時に配慮を要する方向けの商品作り」や「パン・クッキー・めん類などのアルファ化米以外の商品レパートリーを増やす」といった方向性に各メーカーが商品開発を進めてきており、アルファ化米をはじめとする非常食は進化を遂げています。
「非常食はおいしくない」「災害時に止むを得ず食べる」という印象がいまだに根強いのは否定できませんが、そうした印象を払拭するために、各メーカーが「おいしさ」にこだわった商品作りに日々努力をしてきており、「おいしさ」という面でも大きく進化しています。
4アルファ化米の今後の可能性
毎年のように発生する災害も大きな要因として、非常食市場は年々拡大しています。従来は自治体や企業が購入の主体でしたが、家庭で備蓄する動きが強まっています。各メーカーにはこうした動きに合わせた商品作りが求められます。
具体的には、災害時にこそいちばんの楽しみである食事では、「普段と同じおいしいもの」を召し上がってほしいとの考えから、「非常食」と「日常食」の垣根を取り払うような進化が必要となっています。
「普段でも食べられるおいしく手軽な非常食」の提供が可能となれば、災害時でも慌てることなく普段と同じ食事を取ることができ、日常的に非常食を食べることが、防災意識の浸透につながるものと考えています。
災害時の栄養バランスの問題は多く指摘されています。栄養に配慮した食品と組み合わせることによって、「より栄養バランスの取れた非常食へ」と、アルファ化米の可能性はこれからも広がっていくものと考えています。