05米の食味と評価農産物検査規格と穀粒判別器について

はじめに

米穀をはじめとした農産物検査は、流通取引における品質把握、加工工程における品質管理などさまざまな場において実施され、公正かつ円滑な取引と品質改善の促進に重要な役割を果たしています。
検査の実施にあたっては、従来は検査員による目視検査によって行われていましたが、1)高い熟練度、2)高い信頼性や公平性、3)迅速性、が求められるなかで、検査員の技術的な負担を軽減し、効率的な検査のための環境作りとして、検査の機械化への要望が高まっています。
また、高齢化やライフスタイルの変化による食の外部化・簡便化の進展等、時代の変化に対応した農産物検査規格の見直しは不可欠なものです。
そこで、農産物規格の見直しについては、農業競争力強化プログラム(平成28年11月29日農林水産業・地域の活力創造本部決定)や農業競争力強化支援法(平成29年法律第35号)を踏まえ、農産物流通等の現状や消費者ニーズの変化に即した合理的なものとなるよう、生産者団体や流通事業者等からなる「農産物規格・検査に関する懇談会」での中間論点整理(平成31年3月29日)を経て、1)検査場所の緩和、2)穀粒判別器の活用、3)農産物規格の簡素化、4)玄米流通の合理化につながるフレコンの規格設定、等が行われました。
さらに、規制改革実施計画(令和2年7月17日閣議決定)において農産物検査規格の見直しが盛り込まれたことを踏まえ、「農産物検査規格・米穀の取引に関する検討会(全8回)」(令和2年9月から翌5月)における結論のひとつとして「機械鑑定を前提とした農産物検査規格の策定」が公表されたことで、農産物検査の一部を機械により行う環境が整ったところです。
そして、「農産物規格規程」(平成13年農林水産省告示第244号)等の改正が行われ、令和4年産米からは、従来の規格とは別に、白未熟粒、死米、胴割粒、砕粒、および着色粒の検査を穀粒判別器を用いて行うことができるようになっております。

穀粒判別器とは

穀粒判別器は、2001(平成13)年から始まった、農産物検査の主体を国営から民営に移管する動きのなかで、農産物検査員の技術的負担を軽減すること、検査の公平性や信頼性をいっそう高めること等を目的として、03年に米穀検査の「補助機器」という位置づけで誕生しました。
その後、穀粒判別器は、多くの検査機関等においてさまざまな形で有効に活用され、一定の評価を得た一方で、検査官が行う肉眼鑑定より精度が劣るとの声があり、米穀検査の「補助機器」という位置づけが続いていました。
それから10年以上が経ち、検査現場からは、検査技術の習得に相当の経験を要しており、技術継承も困難な面があるとの意見が聞かれるようになりました。
そこで、これまでの「検査補助器」ではなく、「検査機器」を目指した開発を行い、2019(令和元)年、農産物流通等の合理化を図る目的で農林水産省が行った農産物検査の告示改正により、農産物検査の一部項目について穀粒判別器による鑑定が可能となりました。
さらに、2022年、従来の規格とは別に、機械による鑑定を最大限に活用することを目的とした「機械鑑定を前提とした規格」が新たに策定されたことは前述の通りです。これにより、穀粒判別器をはじめとした機器が米穀の検査の一部において活用できる機械化の環境が整い、農産物検査員の負担等の軽減や、農産物検査の効率化や合理化が期待されています。
水稲うるち米の機械鑑定に使用する穀粒判別器、電気式穀粒計及び水分計については、農産物検査に関する基本要領に基づき、使用確認された機器が農林水産省ホームページにおいて公表されています※1(図表1)。

図表1 農産物検査への使用可能機器として、公表している穀粒判別器(機械鑑定用)

横にスクロールします。

機器メーカー 機種名等 対象種類および測定可能な項目
(株)ケツト科学研究所 ・機種名:「RN-700」
・設定:「農産物検査」
【国内産】
玄米(水稲うるち玄米)
【規格項目】
白未熟粒、死米、着色粒、胴割粒、砕粒
(株)サタケ ・機種名:「RGQI100A」
・設定:「農検モード」
【国内産】
玄米(水稲うるち玄米)
【規格項目】
白未熟粒、死米、着色粒、胴割粒、砕粒
・機種名:「RGQI100A_MODIFIED RGQI90A」
・設定:「農検モード」
・機種名:「RGQI100B」
・設定:「農検モード」
静岡製機(株) ・機種名:「ES-5」
・設定:「農産物検査モード」
【国内産】
玄米(水稲うるち玄米)
【規格項目】
白未熟粒、死米、着色粒、胴割粒、砕粒
・機種名:「ES-5R」
・設定:「農産物検査モード」

注1:機器メーカー名は、五十音順。
注2:穀粒判別器により農産物検査を行う場合は、機種名等欄の仕様に記載する測定モードを使用すること。
注3:農産物規格規程(令和4年2月28日農林水産省告示第480号)第1の2の(3)のハの(イ)の水稲うるち玄米(二)に使用できる機器。

精度維持点検

米穀の農産物検査において穀粒判別器を活用するためには、その測定精度を確認または管理し、検査の信頼性を確保する必要があります。客観的かつ安定した測定精度を継続させるためには、年に一度製造販売メーカーによる精度確認を行うことが規定されています。品質評価のものさしとして穀粒判別器が活用できるよう、適切な精度維持点検の実施が望まれます。

おわりに

検査の機械化が進むことで、品質をデータとして“見える化”することができるようになり、今後は品質データの利活用が活発化することが予測されます。
“いつ”、“誰が”測定しても同じ“ものさし”で米粒の品質をデータとしてとらえることのできる装置開発が各社で進められ、取得された品質データがより使いやすくなるシステム向上についてもさらに検討が進むことが期待されます。

(株)サタケ 技術本部 センシンググループ 計測チーム チームリーダー 竹内宏明、(株)日本食糧新聞社

注釈

  1. 農産物検査への使用可能機器として、公表している穀粒判別器(機械鑑定用)
    https://www.maff.go.jp/j/seisan/syoryu/kensa/kokuryu/attach/pdf/index-21.pdf(PDF:53KB)