04米の機能性食事パターンと血清脂質との関連

1はじめに

心臓病・脳卒中などの動脈硬化性疾患は日本において主要な死因の一つであり、2019年に「脳卒中・循環器病対策基本法」※1が施行され、動脈硬化性疾患の予防の重要性が指摘されてきています。また、その危険因子である脂質異常症・高血圧などを含む生活習慣病、さらに、最近大きな問題となっている認知症などの非感染性疾患(Non-communicable diseases;NCD)の増加は、わが国および世界において深刻な健康問題になっています※2。脂質異常症、とくに高LDLコレステロール血症はわが国では過去数十年の間に増加傾向であり、脂質摂取量の増加等の食事要因が大きく影響してきました。
脂質異常症の管理において、栄養素や単一食品に加えて、食事パターンとの関連が近年注目されています※3。食事パターン分析は、食品の複合的摂取状況の評価により疾病リスク予測が可能な研究手法です。日本人の食生活は欧米化・現代化等により変化していますが、近年のわが国の食事パターンと血清LDLコレステロール値との関連は十分明らかになっていません。そこで、われわれは日本多施設共同コホート研究(The Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort〈J-MICC〉Study)のベースラインデータを用いて、2000年代以降の日本人の食事パターンと血清LDLコレステロール値との関連を明らかにすることを目的として検討しました※4

2対象と方法

J-MICC Studyは、全対象者よりインフォームドコンセントを取得しており、中央事務局である名古屋大学大学院、および各調査フィールドの倫理審査の承認を得て実施している多施設共同研究です※5-6。ベースライン調査は2005~13年度に国内13フィールド、35~69歳の男女92,530人を対象に実施し、身体的所見(身長、体重、血圧)、血液検体、自記式質問票の情報を収集しました。本研究の主要評価項目は、Friedewald式を用いたLDLコレステロール値であり、解析対象は空腹時採血を行った男性13,243人(54.8±9.6歳)、女性13,994人(53.2±9.5歳)としました。食事調査は過去1年間の食習慣を問う食物摂取頻度調査法※7-9を用いて、因子分析により男女別に5つの食事パターンを抽出し、共分散分析により食事パターンとLDLコレステロール値との関連を検討しました。

Friedewald式:LDLコレステロール=総コレステロール−HDLコレステロール−中性脂肪/5
空腹時採血の場合のみ。基本的に10時間以上の絶食を「空腹時」とする。ただし、水やお茶などカロリーのない水分の摂取は可とする。

3研究結果

食事パターンは、男女共通パターンとして「高野菜パターン」「高肉類・揚げ物パターン」「高パン・低米飯パターン」が抽出されました。そのほか、男性では「高魚介類パターン」「高菓子・低アルコールパターン」、女性では「健康日本食パターン」「高アルコール・低米飯パターン」が抽出されました(図表1)。食事パターンと血清LDLコレステロールの調整平均値を比較した結果、「高パン・低米飯パターン」により血清LDLコレステロールは高くなる傾向があり、男性では因子得点第1分位と第5分位の差が4.2mg/dL(p for trend<0.001)、女性では第1分位と第5分位の差が7.1mg/dL(p for trend<0.001)でした。また、男性において「高菓子・低アルコールパターン」では、第1分位と第5分位の間で血清LDLコレステロールが9.5mg/dL高く(p for trend<0.001)、「高魚介類パターン」では、第1分位と第5分位の間で血清LDLコレステロールが2.7mg/dL低くなっていました(p for trend<0.001)(図表2)。

図表1 食事パターン5因子の因子スコアと血清脂質の関連

男性(n=13,243)
LDLコレステロール HDLコレステロール
SRC (β) P value SRC (β) P value
高野菜パターン -0.008 0.349 0.007 0.411
高魚介類パターン -0.033 <0.001 0.037 <0.001
高肉類・揚げ物パターン 0.027 0.003 0.019 0.030
高パン・低米飯パターン 0.049 <0.001 0.054 <0.001
高菓子・低アルコールパターン 0.093 <0.001 -0.169 <0.001
Adjusted R2 0.057 0.162
女性(n=13,994)
LDLコレステロール HDLコレステロール
SRC (β) P value SRC (β) P value
高野菜パターン -0.006 0.425 0.032 <0.001
健康日本食パターン 0.001 0.89 -0.001 0.110
高肉類・揚げ物パターン -0.011 0.221 0.016 0.077
高パン・低米飯パターン 0.068 <0.0001 0.053 <0.001
高アルコール・低米飯パターン -0.022 0.015 0.070 <0.001
Adjusted R2 0.186 0.167

SRC:標準化回帰係数 (β)
調整因子:年齢、地域、BMI、喫煙状況、身体活動量、エネルギー摂取量、高血圧・糖尿病治療、他の食事因子スコア

図表2 食事パターンごとの因子得点5分位における血清LDLコレステロールの調整平均値

横にスクロールします。

食事パターン因子得点5分位のLDLコレステロール (mg/dL) P for trend
第1分位 第2分位 第3分位 第4分位 第5分位
男性(n=13,243)
高野菜パターン 118.7
(117.0 , 120.5)
119.1
(117.4 , 120.9)
118.2
(116.4 , 119.9)
118.2
(116.4 , 119.9)
118.3
(116.5 , 120.0)
0.384
高魚介類パターン 120.1
(118.3 , 121.6)
119.8
(118.0 , 121.6)
117.5
(115.7 , 119.2)
117.7
(116.0 , 119.5)
117.4
(115.6 , 119.2)
<0.001
高肉類・揚げ物
パターン
118.7
(116.9 , 120.5)
116.8
(115.1 , 118.6)
118.6
(116.8 , 120.3)
118.6
(116.9 , 120.4)
119.7
(118.0 , 121.5)
0.079
高パン・低米飯
パターン
115.5
(113.7 , 117.3)
117.9
(116.1 , 119.6)
118.6
(116.9 , 120.3)
120.6
(118.9 , 122.4)
119.7
(117.9 , 121.5)
<0.001
高菓子・低アルコールパターン 112.6
(110.9 , 114.4)
118.7
(117.0 , 120.5)
119.9
(118.1 , 121.7)
120.2
(118.4 , 121.9)
122.1
(120.3 , 123.9)
<0.001
女性 (n=13,994)
高野菜パターン 122.1
(119.6 , 124.6)
122.5
(120.0 , 125.0)
122.6
(120.0 , 125.1)
122.2
(119.7 , 124.7)
122.7
(120.3 , 125.2)
0.479
健康日本食
パターン
121.9
(119.4 , 124.4)
122.5
(119.9 , 124.8)
122.5
(120.0 , 125.0)
122.6
(120.1 , 125.1)
122.7
(120.2 , 125.3)
0.299
高肉類・揚げ物
パターン
123.5
(121.0 , 126.0)
122.0
(119.5 , 124.5)
123.2
(120.7 , 125.7)
121.5
(119.0 , 124.0)
121.9
(119.4 , 124.4)
0.055
高パン・低米飯
パターン
118.1
(115.6 , 120.6)
121.9
(119.4 , 124.4)
124.2
(121.7 , 126.7)
122.8
(120.3 , 125.2)
125.2
(122.7 , 127.8)
<0.001
高アルコール・低米飯パターン 121.6
(119.1 , 124.1)
123.6
(121.1 , 126.0)
123.0
(120.5 , 125.5)
122.7
(120.2 , 125.2)
121.1
(118.5 , 123.6)
0.385

§共分散分析
調整因子:年齢、地域、BMI、喫煙状況、身体活動量、エネルギー摂取量、高血圧・糖尿病治療、他の食事因子得点

4考察

「高パン・低米飯パターン」の5分位と、食事摂取頻度調査から算出した総脂肪、飽和脂肪酸(SFA)の摂取量は正の関連があり、血清LDLコレステロール高値と関連した可能性が示唆されました。日本におけるパンの摂取は、食パンだけでなく、バターやマーガリンなどのSFAを多く含む菓子パンや惣菜パンも含まれます。また、男性における「高菓子・低アルコールパターン」は、菓子類に含まれるSFAやトランス脂肪酸(TFA)の摂取量が、血清LDLコレステロール高値と関連した可能性が示唆されました※10-12。先行研究において、中国で近年新たに出現したスナック食パターンが高コレステロール血症のリスクであることが報告されており※13、日本人においても、菓子パン、惣菜パン、菓子類を習慣的に摂取する者が一定数いて、SFAやTFA摂取量が多く、血清LDLコレステロール高値に影響した可能性が考えられます。 本研究の強みは、国内多数のコホートにおける大規模なデータを高度に標準化して収集している点です。しかし、本研究の限界として、横断研究であるため因果関係を確定することはできないこと、因子分析における本研究の累積因子寄与率は約45%であり、残りはマイナーな食事パターンに起因すること、血清LDLコレステロール値は直接法ではなく、Friedewald式による評価であるため、空腹時採血者、中性脂肪<400mg/dLの対象者に限定していることなどがあります。食事パターンに関して、本研究は食事調査データから対象者の食事パターンを分類する分析手法を用いていますが、日本動脈硬化学会は、肉類の脂身や動物脂(牛脂、ラード、バター)、加工肉を控え、大豆、魚、野菜、海藻、きのこ、果物、未精製穀類を取り合わせて食べる減塩した日本食パターンの食事は血清脂質を改善し、動脈硬化性疾患の予防が期待され、日本食パターンである「The Japan Diet」として推奨しています※14

5結論

本研究において2000年代以降の日本人大規模集団における食事摂取頻度調査により男女別に因子分析を行い、食事パターン5因子と血清LDLコレステロールとの関連を検討しました。男女ともに「高パン・低米飯パターン」、また男性の「高菓子・低アルコールパターン」は血清LDLコレステロールと正の関連が認められたことから、これらの食事パターンの改善が血清LDLコレステロール低下に寄与する可能性が示唆されました。

滋賀医科大学NCD疫学研究センター最先端疫学部門 特任助教 北岡かおり

参考文献

  1. 健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(2024年1月30日)
    https://www.mhlw.go.jp/content/10905000/000600241.pdf(PDF:132KB)
  2. WHO.Noncommunicable diseases.(2024年1月30日)
    https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/noncommunicable-diseases
  3. Hu FB.“Dietary pattern analysis:a new direction in nutritional epidemiology.”Curr Opin Lipidol 13:3-9(2002)
  4. Kitaoka K,Miura K,Takashima N,et al.“Association between Dietary Patterns and Serum Low Density Lipoprotein Cholesterol in Japanese Women and Men:The Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort(J-MICC)Study.”J Atheroscler Thromb;30:1427-1447(2023)
  5. Hamajima N,Group JMS.“The Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort Study(J-MICC Study)to detect gene-environment interactions for cancer.”Asian Pac J Cancer Prev;8:317-323(2007)
  6. Takeuchi K,Naito M,Kawai S,et al.“Study Profile of the Japan Multi-institutional Collaborative Cohort(J-MICC)Study.”J Epidemiol;31:660-668(2021)
  7. Tokudome S,Goto C,Imaeda N,et al.“Development of a data-based short food frequency questionnaire for assessing nutrient intake by middle-aged Japanese.”Asian Pac J Cancer Prev; 5:40-43(2004)
  8. Wakai K.“A review of food frequency questionnaires developed and validated in Japan.”J Epidemiol;19:1-11(2009)
  9. Imaeda N,Goto C, Sasakabe T, et al. “Reproducibility and validity of food group intake in a short food frequency questionnaire for the middle-aged Japanese population.”Environ Health Prev Med;26:28(2021)
  10. Nakamura Y,Okuda N,Turin TC,et al“Fatty acids intakes and serum lipid profiles:NIPPON DATA90 and the national nutrition monitoring.”J Epidemiol:20 Supp l3:S544-548(2010)
  11. Hooper L, Martin N, Abdelhamid A, et al.“Reduction in saturated fat intake for cardiovascular disease.”Cochrane Database Syst.Rev:CD011737(2015)
  12. 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」(2020年)
  13. Na L,Han T,Zhang W,et.al“A Snack Dietary Pattern Increases the Risk of Hypercholesterolemia in Northern Chinese Adults:A Prospective Cohort Study.”PLoS One;10:e0134294(2015)
  14. (一社)日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」(2022年版)レタープレス;210(2022)