03米と健康学校給食と米飯給食

1学校給食における米飯給食の歴史※1

(1)学校給食の始まり

日本における学校給食は、1889(明治22)年に山形県の小学校で、貧困児童を対象に昼食の供与を無償で行ったのが始まりです。
1910年代の栄養補給的給食を経て、1930年代に入って就学奨励ないしは社会的政策的配慮からの学校給食に発展しました。さらに、戦時下における学校給食に移行するなかで、給食対象者の一般化および実施主体の公共化という変貌を遂げました。

(2)アメリカの援助とパン食の奨励

学校給食は第二次世界大戦中に一時中断されましたが、戦後の経済的な困窮と食料不足から栄養失調の児童・生徒を救済するために、アメリカなどからの援助物資(ララ物資)を受けて再開しました。1949年からは、ユニセフ寄贈の脱脂粉乳による給食が全国に広がり、ユニセフ給食実施校と未実施校の児童の体位の比較などから、学校給食は国民の支持を得ることになりました。
学校給食を継続するために、法制化の必要が考えられ、1954年に学校給食法が制定されました。
これにより、現在の給食につながる枠組みが築かれました。同年の答申では、米偏重による栄養的欠陥を是正し、食生活を合理的に改善できるものとし、パン食が奨励されています。

(3)米飯給食の推進

1962年には、国内産食料の効果的利用と利用促進および学校給食の普及のために学校給食における米の使用が認められました。しかし、当時アメリカからの小麦にはビタミンB1とビタミンB2が強化されていたこともあり、こうした学校給食用パンに比べて精白米ではビタミンB1、ビタミンB2が不足するとし、これらの栄養素を強化した米(強化米)を精白米に添加することによって補われる形となりました。
1976年には「学校給食法施行規則等の一部を改正する省令」が公布され、米飯は学校給食制度上に明確に位置づけられました。
2009年3月には、食料自給率の高い米を主食とする米飯給食のいっそうの普及・定着を背景に、米飯給食を「週3回以上」を目標として推進することとなりました。具体的には「週3回以上」の学校が86.5%になるような目標が示されました。
なお、強化米の使用は現在も続けている学校もあります。
図表1は2007~08年に実施したNozueらが行った、小学校5年生を対象とした食事調査の結果のうち、1日あたりの習慣的なビタミンB1摂取量の分布をみたものです※2
学校給食を食べている2日と食べていない1日の合計3日間の調査結果に基づいて解析しています。学校給食で提供された強化米からのビタミンB1を含んだ場合と比較し、もし強化米が添加されなかったら摂取量がどのように変化するかを見たものです。
この結果から、強化米が添加されていることによって、子どもたちのビタミンB1摂取量の不足者(推定平均必要量〈EAR〉以下の者)はいないことがわかります。
一方、もし添加していなければ不足者の割合は22.3%と推察されます。

図表1 学校給食で提供された強化米からのビタミンB1を含む場合と含まない場合の習慣的な1,000kcal当たりのビタミンB1の摂取量の分布

学校給食で提供された強化米からのビタミンB1を含む場合と含まない場合の習慣的な1,000kcal当たりのビタミンB1の摂取量の分布
Nozue M.,Ishida H.etal.“How Does Fortification Affect the Distribution of Calcium and VitaminB1 Intake at the School lunch for Fifth-Grade Children?”J.Nutr Sci Vitaminol 59 22-28(2013)

2米飯給食の実施状況

図表2に米飯給食の実施状況の推移を、図表3に米飯週3回以上実施の学校の比率の推移を示します。米飯が学校給食制度上に明確に位置づいた1976年の米飯給食の実施率は36.2%、週当たりの実施回数は0.6回でした※3

図表2 米飯学校給食の実施状況の推移

米飯学校給食の実施状況の推移
資料:文部科学省「学校給食実施状況等調査」
※国公私立学校において学校給食を実施している学校における米飯給食実施率。

図表3 米飯週3回以上の実施の学校の比率の推移

米飯週3回以上の実施の学校の比率の推移
資料:文部科学省「学校給食実施状況等調査」

2009年の米飯給食の普及が推進されたころは、99.9%の学校で米飯給食が実施されていましたが、週当たりの回数は3.2回、3回以上実施している学校は89.5%であり、これは幼児・児童・生徒数の85.9%にあたります。3回の実施校が56.6%ともっとも多く、次いで4回17.8%となっています※4
翌年の2010年には米飯給食の実施率は100%となりましたが、週当たりの実施回数は3.2回と変わっていません。週5回の学校は6.5%でした※5。2021(令和3)年度の調査結果では、米飯給食の実施率は100%、週当たりの実施回数は3.5回、3回以上実施している学校は98%となっており、幼児・児童・生徒の97.8%(9,015,390人)が週3回以上の米飯を給食で食べていることとなります。3回の実施校が36.3%ともっとも多く、次いで4回の28.7%です。週5回の学校は5%でした※6

3学校給食による米飯の摂取量

(1)学校給食の食事パターン

学校給食には、完全給食、補食給食、ミルク給食の3つの食事パターンがあります。完全給食の食事パターンは、主食・おかず・牛乳、補食給食はおかずと牛乳、ミルク給食は牛乳のみの提供です。2021(令和3)年5月1日現在では、完全給食の実施率は小学校で児童数に対して99.1%、中学校で生徒数に対して87.9%※6でした。
主食は米飯とパンや麺などですが、日本の伝統的食生活の根幹である米飯の望ましい食習慣の形成や、食文化を通じた郷土への関心を深めることなどの教育的意義を踏まえ、先にも述べたように、米を主食とした給食が推進されています。

(2)1人分の分量

学校給食の配膳方法は、食缶配膳方式といって、料理単位で食缶に入れ、教室で児童・生徒自身が盛りつけています。一人分の盛りつけ見本が示されており、盛りつけ見本を目安とし均等に盛りつける場合、児童生徒が自分の食べられる量に調整して盛りつける場合など、その盛りつけ方法は学校やクラスごとの指導にゆだねられています。体格や活動量には個人差があるため、クラス内で適切に食べる量が調整できるような盛りつけ指導が重要となります。
図表4は、Nozueらが行った小学校5年生を対象とした学校給食の摂取量調査において、米飯摂取量の分布を見たものです※2。2日間の学校給食での米飯摂取量の平均は、男子 196±59g、女子 151±32gと主食である米飯の摂取量には性差も認められています。また、米飯には米の0.2~0.3%重量の強化米が添加されていました。そのため、ビタミンB1摂取量はご飯の摂取量に依存していることが図表5からわかります。ビタミンB1の働きを考えれば、非常に合理的な方法で強化されているといえます。

図表4 学校給食での1回あたりの米飯摂取量の分布

学校給食での1回あたりの米飯摂取量の分布
Nozue M.,Ishida H.etal.“How Does Fortification Affect the Distribution of Calcium and VitaminB1 Intake at the School lunch for Fifth-Grade Children?”J.Nutr Sci Vitaminol 59 22-28(2013)

図表5 学校給食での強化米からのビタミンB1摂取量の分布

学校給食での強化米からのビタミンB1摂取量の分布
Nozue M.,Ishida H.etal.“How Does Fortification Affect the Distribution of Calcium and VitaminB1 Intake at the School lunch for Fifth-Grade Children?”J.Nutr Sci Vitaminol 59 22-28(2013)

(3)米飯給食のメリット

麺類やパン類を主食にする場合、個包装等で量の調整が難しいことを考えると、主食を米飯にすることで、児童生徒が成長や自分の健康状態に合わせて適切に摂取量を調整できるメリットがあります。
さらに、食べ残しを回避する、すなわち食品ロスの点からもメリットがあります。

女子栄養大学 栄養学部 教授 石田裕美

引用文献

  1. (一社)全国学校給食推進連合会 学校給食の歴史(参照日 2023年11月24日)
    https://www.zenkyuren.jp/lunch/[外部リンク]
  2. Nozue M.,Ishida H.et al.“How Does Fortification Affect the Distribution of Calcium and VitaminB1 Intake at the School lunch for Fifth-Grade Children?”J.Nutr Sci Vitaminol 59 22-28(2013)
  3. 農林水産省 米をめぐる状況について(参照日 2023年11月24日)
    https://www.maff.go.jp/j/seisan/kikaku/attach/pdf/kome_siryou-107.pdf(PDF:6.7MB)
  4. 文部科学省「学校給食実施状況等調査」(平成21年度)(参照日2023年11月24日)
    https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00400802&tstat=000001016540&cycle=0&tclass1=000001040072&tclass2=000001040075&tclass3val=0[外部リンク]
  5. 文部科学省「学校給食実施状況等調査」(平成22年度)(参照日2023年11月24日)
    https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00400802&tstat=000001016540&cycle=0&tclass1=000001050504&tclass2=000001050507&tclass3val=0[外部リンク]
  6. 文部科学省「学校給食実施状況等調査」(令和3年度)(参照日 2023年11月24日)
    https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa05/kyuushoku/kekka/k_detail/1413836.htm[外部リンク]