02米の特性精米JAS(日本農林規格)について
1規格の背景
従来、精米の品質基準としては、2004年に業界が策定した「米穀の品質表示ガイドラインによる精米の品位基準」等が存在していましたが、策定から18年以上が経過しており、この間、精米工場の機械設備・施設をはじめ、工程管理、品質や製造管理等、工場の運営全般にわたり高度化が進み、精米技術が大きく進歩したことから、これを踏まえた基準が必要と考えました。
そこで、一般社団法人日本精米工業会は、現在の技術水準における精米工場の目標となる品質の基準を検討、設定し、2021年3月、農林水産省に対し精米の日本農林規格(JAS)案の申出を行いました。これを受けて、2021年8月の日本農林規格調査会の審議を経て、同年12月に精米の日本農林規格が制定され、2022年1月に施行となりました。
2規格の概要
精米(水稲うるち精米又は陸稲うるち精米の短粒種)の品質について、外観(見た目)やご飯(炊飯)に影響を与える8つの品質項目とその基準を設定しています。
(1)白 度
精米の白さの指標です。JASで規定された白度計(写真1)を使用して計測します。
白度は、白くてきれいなご飯になるかどうかに影響します。
写真1 白度計
(2)水 分
精米の水分値です。JASで規定された、常圧加熱乾燥法、電気水分計(写真2)を用いる方法、近赤外分析計を用いる方法のいずれかで計測します。
水分値は、精米を常温で保存した時の保存性とカビ等の発生に影響します。
写真2 電気水分計
(3)異種穀粒および異物
異種穀粒および異物の混入割合です。異種穀粒とは、その種類の精米を除いた他の穀粒で、陸稲うるち精米、もち精米、玄米およびその他の穀類(小麦等)が該当します。
異物とは、穀粒を除いた他のものおよび完全粒の4分の1未満の大きさの粒です。JASで規定された試験方法で分析します。異物の例を写真3に示します。米以外のもの(雑草の種子等)がないことが重要です。
写真3 異物の例
(4)着色粒
着色粒の混入割合です。着色粒とは、虫、熱、微生物等によって粒面の全部または一部が赤、黄、褐、黒色等に変色した粒(精米の品質に著しい影響を及ぼさない程度のものを除く)です。JASで規定された試験方法で分析します。着色粒の例を写真4に示します。
炊飯したときに着色したご飯粒にならないことが重要です。
写真4 着色粒
(5)被害粒(着色粒を含む)
被害粒の混入割合です。被害粒とは、虫、熱、微生物、その他の障害によって汚染または損傷を受けた粒(砕粒を除く)です。JASで規定された試験方法で分析します。被害粒の例を写真5に示します。
炊飯したときに変形した形が悪いご飯粒が少ないことが重要です。
写真5 被害粒
(6)砕 粒
砕粒の混入割合です。砕粒とは、完全粒の3分の2から4分の1までの大きさの粒です。JASで規定された試験方法で分析します。砕粒の例を図表1に示します。
砕粒が多いと、のり状で口あたりの悪いご飯になってしまいます。
図表1 砕 粒
(7)粉状質粒
粉状質粒の混入割合です。粉状質粒とは、粒質が粉状または半粉状の粒です。JASで規定された試験方法で分析します。粉状質粒の例を写真6に示します。
白濁した粒が多いと精米の見た目が良くないことと、やわらかめのご飯になりがちです。
写真6 粉状質粒
(8)水浸割粒
水浸割粒の混入割合です。水浸割粒とは、水に浸したときに、短径(お米の横幅)の2分の1以上の亀裂が生じる粒です。JASで規定された試験方法で分析します。水浸割粒の例を図表2に示します。
混入率が高いと、ご飯がべちゃつき、食感に影響します。
図表2 水浸割粒
3品質基準
精米の品質は、図表3の品質基準に適合していなければならないと規定されています。すべての区分で適合していなければ合格とはなりません。
図表3 精米の品質基準
区 分 | 基 準 |
---|---|
白 度 | 39以上 |
水 分 | 15.0%以下 |
異種穀粒および異物 | 0.0%以下 |
着色粒 | 0.0%以下 |
被害粒(着色粒を含む) | 1%以下 |
砕 粒 | 3%以下 |
粉状質粒 | 6%以下 |
水浸割粒 | 10%以下 |
4期待される効果
精米JASにより、現在の精米製造における技術水準を反映した目標となる品質基準ができたことで、これまで以上に事業者の精米の品質向上が促進されることが期待できます。
また、規格はすべての精米(製品)に共通の品質基準であるため、購入する際の選択基準のベースになってくるものと思います。精米JASが実現したことで、精米工場のレベルや精米の品質というものに消費社会の関心が高まることで、より消費者ニーズに合致する競争力の高い精米流通につながることが期待されます。