02米の特性栽培・収穫乾燥・籾摺り・精米加工と品質について

コメの品質には、栽培、乾燥、籾摺もみすり、精米加工が影響を与えます。
栽培では、施肥や水管理等の基本順守が重要です。乾燥では、高水分籾の高温急速乾燥を避けることが重要です。
また、籾摺りでは、柔軟なロールを用いることで玄米表面の損傷を防ぐことが必要となります。精米加工では、玄米の過乾燥を避けて水浸割れ粒の発生を防ぐことが望ましいです。
以下にその概要を記載します。

栽培条件と品質

(1)コメ品質低下要因

2010年、猛暑により一等米比率が低下しました。これを受けて、新潟県では検討会を設置し、品質低下について次のように結論づけました。

  1. 登熟期の高温と無降雨による白未熟粒の増加
  2. 作土深が浅く、根域が縮小して栄養不足を惹起
  3. 出穂前の葉色低下が養分吸収力の低下をもたらした
  4. 登熟期の高温によってでんぷん合成が低下し、転流が抑制され、呼吸による消耗が起こった

(2)高温対策

検討会での結論を受けて、以下のような対策を講じました。

  1. 土作りの推進と適正な基肥量の施用
  2. 作期是正と良質茎の早期確保
  3. 適正生育量の確保と過剰生育の防止
  4. 葉色の推移等に基づく穂肥の施用
  5. 水管理の徹底による後期栄養の維持
  6. 適期刈取りと適正な乾燥・調製
  7. 病虫害の防除

(3)高品質・高収量栽培の基本

(2)のような措置をとった結果、翌年には一等米比率が改善しました。高品質・高収量の稲栽培における基本として、以下のような点が重要とされています。

  1. 育苗:健やかな苗を育成する
  2. 耕起:作土を深くする
  3. 元肥:地力、品種に応じて適量を施用する
  4. 田植え:適期に適正な栽植密度で植える
  5. 水管理、中干し:中干しで窒素発散、根を強く張らせる
  6. 穂肥:稲の葉色で適量を判断
  7. 収穫:適期収穫、高水分籾としない
  8. 乾燥・調製:緩慢乾燥、胴割れを防ぐ
  9. 病害虫の防除:カメムシ防除、いもち病防除を徹底する

作期分散の薦め

米の品種は収穫期が早い順に、早生、中生、晩生に分類されます。各地で主要品種である中生品種に生産が集中すると、気象災害による被害が拡大するおそれがあります。また、収穫作業が集中することによる生産コストの増大と品質の低下が懸念されます。
経営規模や販売対象に応じて、早生品種・中生品種・晩生品種を栽培して作期を分散することも考慮する必要があります。

収穫・乾燥と品質

一般に、収穫が早すぎると未熟となり、収量が低く、粒の充実が劣ります(数日だけ早めると味が良いとの報告もあります)。適期収穫の場合は収量が高く、品質も良いものとなります。しかし、収穫が遅れると、もう収量は増加せず、病虫害・胴割れ・穂発芽などが増えます。

(1)収穫・乾燥での対策

収穫・乾燥においては、以下のような対策が必要です。

  1. 適期刈りによる高品質化
  2. コンバイン(図表1)による土砂等の混入を防ぐ
  3. 多肥による倒伏を避ける
  4. 各段階において精選を行う
  5. 降雨直後の収穫は避ける(高水分籾は品質低下が顕著)
  6. 秋落ちの防止が必要(成熟不足となるので早く落水しない)
  7. 登熟不良による収量低下となる、他品種の混入を避ける(コンタミ防止のため、コンバイン等の機械内部をよく洗う)

開発途上国では、人工乾燥施設が普及しておらず、やむを得ず天日乾燥する場合が多くなっています。しかし、熱帯地域では乾燥速度が速すぎるため、胴割れが起こります。
日本では、ライスセンターやカントリーエレベーターなどの共同乾燥施設が普及し、乾燥技術が確立されています(乾減率1%以下)が、品種および作期が集中すると収穫時期が重なり、共同乾燥施設での高水分籾の急速乾燥が増えてしまいます。そこで、伝統的な「はざかけ乾燥」などの自然乾燥も食味改善策として見直されています。乾燥しすぎる(過乾燥)と精米時のひび割れ粒や破砕粒の発生につながり、食味も低下しますので、最終水分含量は14.5~15.0%に調整することが望ましいとされています。

図表1 稲の手刈りとコンバインによる収穫

稲の手刈りとコンバインによる収穫

(2)高水分籾の高温急速乾燥

高水分籾の高温急速乾燥では、以下のような問題が起こりやすくなっています。

  1. 急速乾燥による米粒の胴割れ発生
  2. 高水分籾の乾燥による品質低下
  3. 急速乾燥による米粒外部成分の内部への移動等による品質低下
  4. 高水分貯留による微生物汚染や、やけ米発生などの品質低下

最近では、リモートセンシング技術や近赤外分光分析等の技術が発達し、ICTの発達とも相まって、地力の分析結果に応じた施肥、自動運転のトラクター、場の無人水管理、収穫物の水分含量やたんぱく質含量を測定可能な高性能コンバインなどが開発され、スマート農業に活用されるようになってきました。

籾摺りと品質

従来、諸外国では籾から精米まで一貫処理が行われ、玄米保管や玄米流通は行われてきませんでした。わが国において、柔軟なロールを装着した籾摺り機(ラバーロールハラ―)が開発され、表面の損傷の少ない玄米が得られるようになり、玄米保管や玄米流通が可能になりました。籾摺り後に高品質の玄米を得るには、乾燥直後の高温籾や雨天収穫直後の高水分籾を避けることが重要です。
短粒のジャポニカ米は長粒のインディカ米に比べて籾摺り歩留まりが高く、割れ粒の発生も少ないとされています。

精米加工と品質

(1)精米加工の目的

精米加工の目的は、玄米から胚芽とぬか層を除去して外観と食味の優れた精白米を得ることにあります。胴割れ粒や白未熟粒の多い玄米は精米歩留まりの低下につながるので、検査等級が低くなります。これに加えて、精米工程の前後で、精選機、石抜き機、金属探知機、色彩選別機などが使用され、土砂やもみ殻等の異物が除去され、ロータリーシフター等によって死米や破砕米、ぬかなどが除去されます。
精米工程で微小なひび割れが発生すると、炊飯時に割れ粒となり、米飯の食味を損なうことになるので、玄米の水分含量を調整し、多段式の精白によって破砕粒の発生を抑えることが重要となります(図表2)。

図表2 精米加工における水浸割れ粒の発生と食味への影響

精米加工における水浸割れ粒の発生と食味への影響
精米加工における水浸割れ粒の発生と食味への影響
精米加工における水浸割れ粒の発生と食味への影響
資料:柳瀬 肇「精米加工と品質」米の科学(1995)

(2)精米JAS規格

わが国では、精米JAS規格が2021(令和3)年に制定され、白度、水分、異種穀粒および異物、着色粒、被害粒、砕粒、粉状質粒、水浸割粒などで一定の条件を満たし、「認証の技術的基準」を満たした精米業者によって生産された高品質の精米が、22(令和4)年から生産され始めました(図表3)。これらは、日本精米検査認証協会による認証を受けて表示(JASマーク)されて流通しています。
精米JAS規格は、国内における精米の搗精とうせい技術の高度化にともない、現在の技術水準における精米工場の目標となる品質の基準を規格化したものです。効果としては、精米工場の努力を促し、精米品質の向上が促進されること、消費者の商品選択の参考となり、消費者が自らのニーズに合致したコメを購入しやすくなることがあげられています。
また、精米工程に付加して残存ぬかを除去する装置を導入し、炊飯業界や消費者が洗米工程を省略できる無洗米も普及しています。

図表3 精米JASの品質基準

白 度 39以上
水 分 15.0%以下
異種穀粒および異物 0.0%以下
着色粒 0.0%以下
被害粒 1%以下
粉状質粒 6%以下
砕 粒 3%以下
水浸割粒 10%以下
新潟薬科大学 特任教授 大坪研一